こんにちは、ネコリテです。
今回は「猫の急性腎障害【前編】」の続きとして、治療から回復までの経過や、実際にかかった費用についてまとめました。
同じように猫さんの不調で悩んでいる方に、少しでも参考になればと思い、できるだけ具体的に体験談をシェアしています。
「どんな治療だったの?」
「実際いくらかかった?」
「早期発見するには?」
そんな疑問をお持ちの方のお役に立てたら嬉しいです。
※この記事は後編です。
「急性腎障害(急性腎不全)について、サクッと理解したい!」という方は、
👉まずは前編からどうぞ
排尿が止まった…受診のきっかけ
<愛猫プロフィール>
ノワちゃん/女の子/2016年7月生まれ
7歳の時に「左の腎臓が萎縮して機能していない」ことが発覚。慢性腎臓病ステージ2と診断され、ラプロスを服用している。
2025年4月時点の腎数値はBUN30、CRE2.19
性格はデリケートで気が強く、病院で大暴れするタイプ
最初の異変は、フードの食べ残しでした。
いつもはしっかり完食する子だったのに、2週間ほど前から少しずつ残すように。
ノワちゃんは偏食・少食気味で、季節の変わり目には食欲が落ちることもあったため、「急に暑くなったせいかな?」と思い、フードの量を減らして様子を見ていました。
1週間ほど経っても、食欲はいつもの7割程度のままでしたが、元気はあって排泄も良好。
「そろそろ胃腸薬が必要かも?」と思い病院に連絡しましたが、予約が混み合っており、数日後に診てもらうことにしました。
すると、決定的な異変が…。
丸1日、おしっこが出なかったのです。
普段からトイレの回数は1-2回と少ない子でしたが、それでも24時間排尿がないのは初めてで、明らかにおかしいと感じました。

【猫知識】48時間以上おしっこが出ないと、体に毒素がたまって「尿毒症」になるリスクが高くなるよ。命に関わる状態だから、すぐに病院へ連れて行ってね!
加えて、その日の食欲は普段の半分以下、少し食べては吐いてしまう状態に。
「もしかして、胃腸の問題だけではないのかも…」
そう思い、予定を早めて病院へ連れて行きました。
実際の通院記録
【通院1日目】胃腸炎かと思ったら…
食欲は普段の半分以下。食べたそうな素振りは見せるものの、体が受け付けないのか、少し口にしては吐いてしまう状態。
そして何より気がかりなのは、丸1日排尿がなかったこと。
病院でエコー検査を受けたところ、胃腸の動きが鈍く、尿管が腫れていることが判明。
排尿できない原因が「一時的な尿管の腫れ」であれば、薬での治療が可能ですが、もし結石や腫瘍によって「尿管閉塞」を起こしている場合は、命に関わるため手術が必要になるとの説明を受けました。
ひとまず点滴と薬で様子を見て、翌日再診予定。
ただ、それまでに排尿がなく容体が急変した場合は、夜間救急を受診するよう指示がありました。
病院から帰宅後、皮下点滴を刺した跡から液体がにじみ出ていたのが気になるようで、ノワちゃんはしきりに舐めていました。

ただ見た目には元気そうで、テーブル(高さ約70cm)にジャンプして乗るなど、普段と変わらない動きでした。
そして点滴から6時間後、無事に排尿。
尿はほとんど無色・無臭で、腎臓が末期のときに見られるような、水のような尿でした。
<1日目の治療内容>
エコー検査、皮下点滴、胃腸薬、制吐剤、ステロイド(尿管の腫れをひかせる)、ビタミン剤
【通院2日目】血液検査で衝撃の展開
前日に点滴をしてから4回排尿。
心配していた「尿管閉塞」の不安は解消されました。
食欲も少しずつ戻ってきましたが、食べた直後に吐いてしまうので、少量ずつごはんを与えました。
もともとノワちゃんは慢性腎臓病ステージ2なので、今回の不調にも腎臓が関係しているかもしれないと思い、血液検査をしてもらいました。
すると…
腎臓の数値が急激に悪化!!
項目 | 基準値(健康な猫) | 今回の値 | ノワの平常値 |
---|---|---|---|
BUN 尿素窒素 | 17.6~32.8 | 114.7 ↑ | 30くらい |
CRE クレアチニン | 0.90~2.10 | 10.86 ↑ | 2.2くらい |
SDMA 対称性ジメチルアルギニン | 14以下 | 外部検査のため、結果は後日 | 17くらい |
クレアチニンは10を超えていて、これはかなり深刻な状態。
ちなみに慢性腎臓病ステージ4(末期)の目安が「クレアチニン5以上」なので、その2倍…。
腎臓へのダメージがかなり大きいということになります。
この結果を受けて、「重度の急性腎障害」と診断されました。
本来なら即入院レベルでしたが、ノワちゃんは繊細で怒りっぽい性格なので、先生と相談の上、1週間ほど毎日通院して点滴することになりました。
ただ、ひとつだけ気になることが…。
クレアチニン10超えは、本来ならぐったりして、歩くのもやっとのはず。
しかしノワちゃんの状態は「元気がいつもの3割減くらい」で、見た目は全く「重度の急性腎障害」には見えないんです。
猫さんは弱っていても元気なふりをする動物とはいえ、それを差し引いても「クレアチニン10」とのギャップがありすぎて半信半疑でした。
もしかして、血液検査の数値が間違ってる? 他の子の結果と取り違えたとか…?(SDMAの結果は外注なので、この時はまだわからず)
そんな疑念を抱えて帰宅すると、キャリーから出たノワちゃんが、ぱたんと床に横たわってしまいました。
「採血の時に暴れたから疲れたのかな?」と思ったのですが、よく見ると瞳孔が開いて口呼吸をしている!
急変した!? とハラハラしましたが、10分ほどで落ち着きました。

そしてしばらく横たわって休憩した後は、ごろんと転がって、普段通りに戻りました。

<2日目の治療内容>
血液検査、皮下点滴、胃腸薬、制吐剤、ステロイド(尿管の腫れをひかせる)、ビタミン剤
【通院3日目】食欲回復で見た目も元気
食欲は普段の8割くらいまで回復し、見た目はいつも通り元気です。
排尿は透明無臭のものが9回で、水をよく飲んでいました。
多めの点滴を入れているので尿が多いのは当然なのですが、まるで腎臓病末期の「多飲多尿」のようにも見えたので、先生にいろいろ質問してみました。

いくら点滴を入れていても、1日9回の排尿は多すぎませんか?

大丈夫ですよ。今はたくさん排尿して、体の毒素を出し切ってほしいので、回数が多いことは問題ありません

点滴をしているのに水もよく飲むので、もしかして腎臓病末期の多飲多尿ではないかと心配です

確かに多飲はあまり良くないですね。ただ体に毒素が残っていると喉が渇きやすいので、今はその影響かと思います

あと昨日は帰宅後にぐったりして、10分程度、瞳孔が開いて口呼吸の状態になりました。受診のストレスだと思うのですが、もしくは点滴の量が多すぎて体に負担がかかってしまった可能性はありますか?

皮下点滴はゆっくりと体に吸収するので、帰宅直後のタイミングであれば、受診のストレスだったと思います。神経質な猫さんは、ストレスで一時的に口呼吸になることも珍しくないので、帰宅後1時間以内におさまっていれば大丈夫です
<3日目の治療内容>
皮下点滴、胃腸薬、制吐剤、ステロイド(尿管の腫れをひかせる)、ビタミン剤
【通院4日目】半信半疑な血液数値
食欲は完全に回復し、普段通りのフード量を食べるようになりました。
元気もあり、お気に入りの手すり(高さ約1m)へジャンプして乗っていました。

排尿は7回で、今まで無色無臭だったものが、少しずつ色とアンモニア臭が復活してきました。
昨日相談した「水をよく飲む」件は、この日からおさまりました。
予定では1週間の点滴通院でしたが、思った以上に回復スピードが早いので、今後の治療スケジュールについて先生へ確認しました。

2日前の血液検査でクレアチニンが10という結果でしたが、それにしては1mジャンプもできて元気そうに見えるので、数値に誤りがある可能性はないでしょうか?その場合、本来必要のない「大量の点滴」を入れているのではないかと心配です…

もともとノワちゃんのように慢性腎臓病でクレアチニンが高め(2以上)の子は、クレアチニンが急に10になっても、そこまで元気が落ちないケースがあります。体が高めのクレアチニンに慣れている状態だからです。ただ1mもジャンプできるほど元気なのは、かなり珍しいケースですね。
点滴の量に関するご心配は、体重が増えていないということは、しっかり体に吸収されている証拠ですので、その点は大丈夫ですよ

では引き続き点滴を続けるとして、「クレアチニンは下がるのに時間がかかる」と認識していますが、今後の治療にかかる期間の目安を教えてください

まず1週間ほど点滴を続けた後に血液検査を行い、その時点でクレアチニンが7〜8程度まで下がっていれば、慢性腎臓病の急性増悪が原因と考えられます。この場合は、その後さらに1ヶ月ほど治療を続けて3〜4程度まで改善すれば順調と言えるでしょう。
一方で、1週間後の再検査でクレアチニンが2程度まで下がった場合は、一時的な尿管の詰まりが原因だった可能性が高いと考えます
<4日目の治療内容>
皮下点滴、胃腸薬、制吐剤、ステロイド(尿管の腫れをひかせる)、ビタミン剤
【通院5日目】数値回復!点滴も終了
食欲・元気・おしっこは全て順調で、4日ぶりに便も出てくれました。
急性腎障害(急性腎不全)の回復が想定より早かったので、1週間を待たずして血液検査を行うことになりました。
結果はBUN30.3、クレアチニン2.17で、ノワちゃんの通常値に戻りました。

電解質はほぼ正常で、前回高かったリンも基準値内におさまりました。
白血球が65で低めですが、普段から80程度と低いので特に問題なし。
この日は3日前に外注で依頼したSDMA(腎機能の指標)の結果が届きました。

SDMA 61.9(健康猫は14未満)
普段のノワちゃんの数値は17-18なので、いつもの3倍以上高いです。
ということは半信半疑だったBUN100超、クレアチニン10という結果は正しく、腎臓が何らかのダメージを受けていたことは確実でした。
今回の急性腎障害は、エコーで確認された「尿管の腫れ」により尿の流れが悪くなり、逆流などで一時的に腎臓へ負担がかかった可能性が高いとの診断でした。
点滴通院は一旦終了し、「尿管の腫れ」に対してはステロイドを1週間投与。
その後、再診することになりました。
<5日目の治療内容>
血液検査、ステロイド錠剤 1週間分処方
回復後の再診
ステロイドを1週間服用した後、エコーで尿管を確認しました。
すると腫れはすっかり治まっており、体調も安定していたため、急性腎障害(急性腎不全)の治療はこれで終了となりました。
フォローアップとして、ステロイドがさらに3日分処方されました。
また、2日前と前日に毛玉を含んだ吐き戻しがあったため、胃腸の動きをエコーで見てもらったところ、やや動きが弱いとのこと。
念のため、胃腸薬も処方してもらいました。
<再診の治療内容>
エコー検査、ステロイド錠剤と胃腸薬 3日分処方
★急性腎障害の治療終了
急性腎障害(急性腎不全)にかかった治療費
動物病院での治療費は、やはり気になるポイントですよね。
今回の急性腎障害(急性腎不全)の治療にかかった、おおよその税込料金を紹介します。
- 点滴通院(1回分) 4,500円
- 血液検査(全身) 7,000円
- 血液検査(腎臓関連のみ) 4,000円
- SDMA(院外検査) 5,000円
- エコー検査(全体) 4,000円
- エコー検査(一部) 2,000円
- ステロイド 錠剤1週間分 1,800円
通院1日目 | エコー検査、点滴+注射(ステロイド、胃腸薬、制吐剤、ビタミン剤) | 8,500円 |
通院2日目 | 血液検査(全身+SDMA)、点滴+注射(ステロイド、胃腸薬、制吐剤、ビタミン剤) | 16,500円 |
通院3日目 | 点滴+注射(ステロイド、胃腸薬、制吐剤、ビタミン剤) | 4,500円 |
通院4日目 | 点滴+注射(ステロイド、胃腸薬、制吐剤、ビタミン剤) | 4,500円 |
通院5日目 | 血液検査(腎数値のみ)、ステロイド1週間分 | 6,500円 |
再診 | エコー検査、ステロイド+胃腸薬1週間分 | 3,500円 |
トータル | 44,000円 |
通院で6回で約44,000円でした。
急性腎障害(急性腎不全)としては、かなり順調に回復したケースなので、治療費は安く済んでいる方かと思います。

その病院の料金設定が「高め」か「低め」かを見極めるには、初診料と再診料をチェックすると分かりやすいよ。目安として初診料が1,000円前後、再診料が500円前後であれば、治療費も比較的リーズナブルな傾向があるよ
【まとめ】猫の急性腎障害(急性腎不全)
どんな症状?
食欲低下・元気がない・嘔吐・おしっこが少ない・おしっこが丸1日出ていないなど。
症状は急に悪化するので、早めの受診が必要です。特におしっこの異変は、すぐに処置をしないと命を落とす危険があるので要注意!
血液検査では、腎臓の数値に急激な悪化が見られます。
原因は?
原因は様々ですが、大きく3つ「腎前性」「腎性」「腎後性」に分類されています。
原因 | 腎前性 | 腎性 | 腎後性 |
---|---|---|---|
問題がある場所 | 腎臓より前(心臓など) | 腎臓そのもの | 腎臓より後ろ(尿路など) |
腎臓の状態 | 血流が不足して機能低下 | 腎臓が直接ダメージ | 尿が出せず逆流し負担 |
症例 | 心疾患、脱水、大量出血など | 中毒、細菌感染など | 尿路結石、泌尿器の腫瘍など |

治療期間は?
症状によって異なりますが、目安は早期回復すれば1~2週間、長引くと数ヶ月。
ただし急性腎障害から慢性腎臓病へ移行した場合は完治しない為、対症療法(投薬・サプリ・点滴・療法食など)を生涯続けていくことになります。
わが家の愛猫は腎後性の急性腎障害で、手術不要、薬がよく効き短期間で回復したケースでした。
その場合の通院回数は「毎日通院✕5日間」、その後1週間投薬して「再診✕1日」で計6回。治療終了までの期間は約2週間でした
治療費はどのくらい?
治療費の相場
*点滴1回 4,000~5,000円
*血液検査 4,000~1万円
*エコー・レントゲン 3,000~1万円
*入院1日 3,000~1万円
*尿結石を除去する手術 15万~30万円
*尿管にステント(細いチューブ)を入れる手術 20万~50万円
*SUBシステム(腎臓と膀胱をカテーテルで繋いで、新しい尿の通り道を作る手術) 40万~80万円
急性腎障害(急性腎不全)の治療費は、原因や症状によってかなり金額差があります。
ざっくりとした目安になりますが、
- 早期発見で順調に回復→約1週間の通院 4万~6万円くらい
- 少し時間がかかった場合→1~2ヶ月の通院 10~20万円くらい
- 重症で手術が必要→30万~100万円くらい
を想定しておくと良いかと思います。
早期発見のポイントは?
猫の急性腎障害(急性腎不全)は、命にかかわるだけでなく、数十万円単位の医療費がかかることもあります。
だからこそ、「あれ?」という違和感を見逃さないことが何より大切です。
早期発見のポイントは、排尿の変化に気づけるかどうか。
でも猫さんは体調が悪くても我慢強くて、サインがとても分かりづらいんですよね。
たとえば、「1週間交換不要」のトイレシートを使っていると、排尿の頻度や量の異変に気づきにくくなってしまいます。
そんな場合は1回交換タイプに変えて、「今日もちゃんとおしっこしたかな?」を毎日チェックするだけでも安心感が違います。
観察ポイントは以下の通りです。
- 排尿の回数や量が減っていないか
- 色が薄く・濃くなっていないか
- 排尿中に鳴いたり、落ち着かない様子がないか
- トイレを掘る仕草はしても、排尿していないことがないか
とは言え…
「うちは多頭飼いで、誰のおしっこかわからない」
「日中は仕事でトイレチェックなんて無理…」
そんな方には、AIでトイレ状況を記録してくれる便利グッズがとても心強い味方になります。
代表的な2社の製品を紹介しますね。
✅Catlog Board(キャトログ ボード)
今あるトイレの下に専用ボードを敷くタイプ。月額使用料が必要
✅Toletta(トレッタ)
専用のカメラ付きトイレを設置するタイプ。月額プランと一括購入プランが選択可能
\月額プラン/
\新登場の一括購入プラン/

多頭飼いの固体識別については、「毛色や体重が同じだと識別しにくい?」という口コミが見られたので、各製品の特長をしっかりリサーチして選んでね
【最後に】愛猫の不調に悩む飼い主さんへ
今回ノワちゃんが急性腎障害(急性腎臓病)を発症したことで、あらためて「おしっこ」がどれほど大切なサインかを思い知らされました。
どんなに元気そうに見えても、体の中では静かに異変が進んでいることもあります。
そしてそれを、猫は自分の力だけでは伝えることができません。
たった一日、排尿がなかっただけで命に関わる可能性がある――。
今回は大事に至らず回復してくれましたが、今振り返ると「いつもの季節性の食欲不振かな」と軽く考えていた初期の段階でエコー検査を受けていれば、急性腎障害(急性腎不全)にまで進行することはなかったかもしれない──そんな思いが残っています。
実はノワちゃんが7歳の時、「左の腎臓が機能していない」とわかったのも、たまたま食欲不振で動物病院へ行き、先生がエコー検査を提案してくれたからでした。
もしあの時「とりあえず胃腸薬で様子を見ましょう」という対応だったら、薬で一時的に元気を取り戻し、腎臓の異変に気づかないままだったと思います。
だからこそ、声を大にして伝えたいのです。
猫さんが食欲を落とした時は、ぜひエコー検査を受けて、腎臓や泌尿器も診てもらってください。
病院が混んでいたり、猫さんが暴れたり、あるいは飼い主さんの負担を思って「まずは胃腸薬で様子を見ましょう」と言ってくれる先生もいるかもしれません。
でも、5歳以上でしばらくエコーを受けていない子の場合は、飼い主さんの方から「エコー検査もお願いできますか?」と声をかけることは大切だと、私は身をもって感じました。
このブログをここまで読んでくださったあなたは、きっと大切な猫さんの体調に不安を感じているのだと思います。
もしそうなら、ぜひ「いつもと違う小さな変化」を見逃さず、できるだけ早く病院へ相談してくださいね。
以上、不安を抱える飼い主さんの参考になればという想いで、私自身の体験を記録に残しました。
すべての猫さんたちが少しでも長く、健やかに過ごせますように。