腎臓病の猫の飼い主として、注目しているのがAIM(エーアイエム)。
AIMは「腎臓病の画期的な薬になるのでは」と期待されており、元東京大学大学院教授で内科医の宮崎徹先生のもとで研究が進められています。
わが家でも療法食と併用しながら、AIMの働きに着目したキャットフード「AIM30」を与えています。
2026年1月には「治験が終了し、間もなく承認申請が可能となる見込み」という公式発表もあり、薬の実用化がいよいよ現実味を帯びてきました。
とはいえ、これまでの私のAIMのイメージは、正直なところ「腎臓病に効くらしい薬」くらいのもの。
そこで改めて、AIMは腎臓病にどのように働くのか、そしてキャットフードのAIM30には本当に効果があるのかを調べてみました。
腎臓病のしくみ
腎臓には体の中の老廃物(ゴミ)をザルのような仕組みでろ過し、おしっことして体の外へ排出する働きがあります。

ザルがゴミで目詰まりし、うまくろ過できていない状態が腎臓病です。

高齢猫に多い慢性腎臓病は、「ゴミが長い時間かけて少しずつたまっていく」状態です。
そのため、腎臓の健康を保つには「ザルにゴミをためないこと」が重要になります。
腎臓病用の療法食は「ゴミが出にくいごはん」ですが、決して万能フードではなく、筋肉量の減少や栄養不足のリスクもあるため、腎臓の状態に応じて獣医師の判断のもと適切に与えることが大切です。
AIM30のメーカーによる説明
キャットフードのAIM30は療法食ではなく、総合栄養食という一般のキャットフードになります。
そのため「腎臓病に効くってどういうこと?」と疑問でした。
製品パッケージに記載されていることは、
- アミノ酸 A-30配合
- 宮崎徹先生のAIM研究成果から誕生
- 腎臓の健康維持フード
具体的な説明は書かれていないので、メーカーの公式サイトで確認すると、


- AIMは血中に存在するタンパク質で、腎臓の健康維持をサポート
- A-30は猫の健康維持にアプローチするアミノ酸
- 詳しくは宮崎徹先生の本に書いてあるよ
なんだかオブラートに包んだ表現で、最終的には宮崎先生の本へ丸投げのような形になっており、メーカーが詳しく説明できないのは薬機法の影響なのだろうなと察しました。
ペットフードも薬機法の対象で「医薬品、医薬部外品または化粧品等の認可を受けたものでなければ、その効能・効果・性能に関する広告をしてはならない」と定められています。
そのため宮崎先生が所長を務める「一般社団法人AIM医学研究所」のHPから情報収集することにしました。
【かんたん解説】AIMが腎臓病に役立つしくみ
AIMの働き
AIM医学研究所の研究概要によると、健康時のAIMはIgMという抗体と結合していますが、体内に老廃物(ゴミ)を見つけるとAIMはIgMから離れます。
離れたAIMはゴミに目印をつけて、掃除係の細胞(貪食細胞/マクロファージ)に「これを掃除してね」と知らせます。
わかりやすくイラストで解説しますね。





このように掃除をすることで、ザル(腎臓)にゴミがたまらないよう保たれているのが、健康な状態の腎臓です。

人間や犬ではAIMがこのように働きますが、猫ではAIMがうまく機能しません。
腎臓にゴミがたまってもAIMがIgMから離れないため掃除ができず、ゴミが腎臓に蓄積し続けて慢性的な炎症が起こることが、猫に腎臓病が多い大きな原因の一つと考えられています。
猫はAIMが働きにくい体質
猫のAIMはIgMと結びつく力が強すぎるため、体内にゴミがあってもうまく働いてくれません。

お掃除係の細胞は「目印」がないとゴミを認識できないため、AIMが機能しない猫の体内ではどんどんゴミが蓄積してしまいます。
その結果、腎臓が目詰まりを起こし、体調の悪化を招いてしまうのです。

2016年に発表された論文によると、猫のAIMとIgMの結合はマウスの1000倍の強さだそうです。
In cats, the AIM-IgM binding affinity is 1000-fold higher than that in mice, which is caused by the unique positively-charged amino-acid cluster present in feline AIM.
日本語訳:猫において、AIMとIgMの結合親和性(結合の強さ)はマウスの1000倍も高い。これは、猫のAIMに存在する特有の『プラスの電気を帯びたアミノ酸の集まり(陽電荷アミノ酸クラスター)』が原因である。
引用元:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27731392/
つまりマウスのAIMとIgMがマジックテープでくっついているとしたら、猫は接着剤でくっついているような感じです。
AIM薬がどうやって腎臓病を治すの?
「猫のAIMが働かない」ことに着目した治療薬が、AIM薬です。
自分のAIMが働かないなら「しっかりと働くAIMを補おう」ということで、注射でAIMを体内に入れて、ゴミに目印を付ける仕事をやってもらいます。



AIM医学研究所のHPでは、このように説明されていました。
早い時期からAIMを定期的に与えゴミを掃除しておけば、そもそも腎臓病の発症は抑えられるでしょうし、進んでしまった腎臓病でもAIMの投与により進行を抑え、長期的には腎機能の回復の可能性もあると考えられます。
引用元:AIM医学研究所/研究概要
つまり萎縮してしまった腎臓が元に戻るわけではないけど、AIM薬でゴミ掃除をすることで、進行を遅らせる(=寿命を延ばす)ことは期待できそうです。
キャットフードAIM30はどんな効果があるの?
AIM薬のしくみを理解すると、次に気になるのはキャットフードの「AIM30」の効果。
製品情報に「AIM配合」とは書かれておらず、有効成分っぽいものはA-30。

AIMじゃなくてA-30?
健康アプローチのアミノ酸?
漠然としすぎてよくわからない…。
そんな飼い主が気になる疑問の答えは、AIM医学研究所のHPに詳しく掲載されていました。
AIM薬(AIMたんぱく質を直接薬剤としたもの)の開発研究と並行して、体内のAIMを活性化する人間用のサプリメントを開発する目的で、AIMを活性化する、すなわちIgMから解離させる天然物を長い期間探索してきました。そうした中で、ドリアンの果肉に含まれる成分がAIMを活性化させる効果があることが分かり、その知見に基づいてさらに研究を進め、必須アミノ酸であるシステインが2個結合した形のL-シスチンを最終的な候補物質として同定しました。L-シスチンは、すでに複数のサプリメントや食品添加物として使われており、その安全性については保証されています。
引用元:AIM医学研究所コラム
つまり「A-30」の正体は、AIMをIgMから離すアミノ酸「L-シスチン」でした。
A-30/L-シスチンとは?
A-30(L-シスチン)の働きをイラストで解説すると、こんな感じになります。
ゴミが発生しているのに、AIMとIgMががっちり結合していると…

L-シスチンがやって来て、AIMとIgMを切り離します。

するとAIMは、本来の任務である「ゴミに目印をつける仕事」を開始します。

目印が付けられたゴミは、お掃除細胞が回収してくれるので、体内はきれいに保たれます。

つまりAIM薬が「代わりの人材を派遣する」のに対し、L-シスチンは「本人をなんとか働かせる」というアプローチになります。
L-シスチンを猫の血液に加えると、猫AIMであってもある程度IgMから解離し活性化することを昨年1月に見出しました。
腎臓に蓄積したゴミがまだ少量で、腎臓の損傷がまだない、もしくは軽度なうちに、ネコがL-シスチンを定期的に摂取し、少量ではあってもコンスタントにAIMを活性化させることで、腎臓病の予防や病態の悪化を抑制する可能があります。
引用元:AIM医学研究所コラム
L-シスチンの効果は「ある程度解離させて活性化する」という段階にとどまるため、AIM薬に比べると働きは穏やかのようです。
あくまでも治療ではなく、予防的アプローチという位置付けですね。
ちなみにキャットフード「AIM30」の名前の由来は、AIM+30歳まで長生きしよう!という意味なのだそう。
ということは、「A-30」はアミノ酸+30歳まで長生きしよう!なのかなと推測しています。
\おやつタイプのAIM30/
\サプリメントのAIM30/
タンパク質とアミノ酸の違い
AIMは「タンパク質」、L-シスチンは「アミノ酸」です。
この違いによって、体内への取り込み方が変わります。
【AIM薬】注射
【L-シスチン】経口摂取(フードやサプリ)
では、なぜこのような違いがあるのでしょうか。
その秘密は、それぞれの「構造」に隠されています。
タンパク質とアミノ酸の違いを、ざっくり説明すると「大きさ」です。
レゴブロックで例えるなら、
- タンパク質:レゴで作った家
- アミノ酸:パーツ(ブロック)
というイメージです。

タンパク質であるAIMは、口から摂取すると胃腸で分解されてしまうので、体内でそのまま働くことができません。
そのため、血液中に直接届ける注射という方法で投与されます。
一方、アミノ酸であるL-シスチンは、それ以上分解されない最小単位の成分です。
そのため食べ物として摂取し、そのまま体内に取り込むことができます。
つまり、食事として手軽に摂取できること、これがAIM30の大きなメリットです。
そこには宮崎先生の、こんな想いが込められています。
AIM薬のような治療効果を望むことは難しいとはいえ、上記のように予防や軽症の腎臓病には効果が期待できると考えられるL-シスチンを配合したペットフードを、どこででも買える安価な商品として、できる限り速やかに愛猫家に届けられるようにしたかった
引用元:AIM医学研究所コラム
AIM30はカテゴリとしては「一般食」ですが、確かな科学的エビデンスに基づいて開発されたフードです。
さらに現在は、臨床試験を経て数年後の発売を目指す「療法食」の開発も進められているそうで、飼い主として大いに期待をしています。
AIMまとめ
- 慢性腎臓病を予防するためには、体内にたまった老廃物(ゴミ)を正常に掃除することが大切
- AIMはタンパク質の一種で、ふだんはIgMという抗体に結合している
- AIMの役割は、体内の老廃物に「ここにゴミがありますよ」という目印を付けること
- ゴミ回収自体は、マクロファージなど別の掃除役の細胞が行う
- 猫のAIMはIgM抗体と強く結合したままで、ゴミがあっても働きにくい=老廃物がたまって、腎臓病になりやすい
- AIM薬は注射によって「働き者の代理AIM」を体内に入れ、ゴミに目印を付けてもらう治療
- キャットフードAIM30はL-シスチンを体内に取り込むことで、AIMをIgMから離して働きやすくすることが目的
- 腎臓病への治療効果はAIM薬の方が高いと考えられている。一方でキャットフードAIM30は、毎日の食事で腎臓病の「予防」や「健康維持」をサポートできるという手軽さが魅力
